病気の説明
耳の病気について
耳閉感・難聴を来す疾患
症状
- 耳閉感とは耳がつまる 耳がふさがる こもる ひびくなどの自覚症状です。
- 原因となる疾患により難聴や、めまい、かゆみ、耳漏、痛みなどの症状を伴います。
- 外耳・中耳が原因
外耳道炎・鼓膜炎
耳垢・耳垢栓塞
中耳炎
外耳道異物
外耳道の狭窄
- 耳管が原因
耳管狭窄症
耳管開放症
- 内耳が原因
急性低音障害型感音難聴
突発性難聴
メニエール病
頻度は少ない
外リンパ瘻
上半規管裂隙症候群
後迷路疾患
耳垢(みみあか)耳垢栓塞
概要
- 耳垢は鼓膜の位置から外に向かって自然に移動してきます。
- 小さな耳垢は放置しても問題ありません。取ろうとすると逆に溜まりやすくなります。
- 耳垢は細菌や真菌からの防御の働きがあります。ある程度溜まっても問題無く、掃除をしすぎるのが問題と言えます。
耳垢栓塞
- 外耳道に耳垢が詰まってしまう状態です。綿棒で耳垢を押し込んでしまい、固まってしまうことが多いようです。
- 耳閉感、難聴、かゆみ、頭を動かすとカサカサ音がする。
- 大きくて固くて簡単に取れない場合には耳垢を溶かす薬を点耳して柔らかくしてから除去します。
耳掃除について
- 耳垢は奥から移動してきて外耳道の入り口から1cm程度の場所にあります。
- 70~80%の方は乾性(固め)耳垢です。
- お風呂上がりに乾性の耳垢が柔らかくなりやすいので、清潔な綿棒で、穴から1cm程度をそっと拭き取ります。
- 月に1回か2回程度で十分です。
- 子供さんなら、親御さんが見て、見える場所に耳垢があれば、やさしく取ってあげるのが良いでしょう。
- 子供さんは自宅で掃除中に、動いて(暴れて)外耳道や鼓膜を傷つけることがあります、無理をせずに耳垢が溜まっていれば受診しましょう。
- 加齢により、自浄作用が衰え耳垢が溜まる傾向にあり、とりにくくなります。かゆみや、耳漏があったり、聞こえが悪くなったら耳垢が詰まってることもあります。無理をせず耳鼻科を受診をおすすめします。
外耳道の湿疹
概要・原因
- 外耳道の皮膚に湿疹を生じかゆくなり、分泌物でじくじくしたり、乾燥してカサカサします。
- 毎日耳掃除をしたり、よく耳を触ったりすると、繰り返しやすくなります。
- 皮膚を掻きすぎて細菌の二次感染が起こると腫れて、痛くなります。
予防・治療
- 耳の処置、外用薬を使用します。
- 外耳道を刺激するとかゆみが増します。耳かき・綿棒を頻繁に刺激すると余計かゆくなる、汁が出るなどの悪循環になります。
- 日頃から、綿棒や耳かきや指での皮膚への刺激を避けることが大切です。
耳掃除しすぎの注意
- 綿棒、耳かきで耳を触ると気持ちが良いので→耳をいじる → 気持ちよい、痒くなる→またいじる→外耳道の自浄作用を低下させる→液、角化物が増える→耳だれ→かゆみ→耳掃除の悪循環に陥り、難治性になることがあります。
急性外耳道炎
概要・原因
- 耳かき、綿棒、爪での皮膚の傷や水泳、耳栓、イヤホンなどによる傷への影響がきっかけで、皮膚へ細菌感染がおこります。
症状・治療
- 耳痛、耳だれ、外耳道が腫れると耳閉感、難聴があります。
- 耳を引っ張ったり、押したり、顎を動かすと痛みます。寝返りをして耳が下になると痛みが増します。
- 軽い場合は、耳処置、外耳への外用薬、腫れや症状が強い時は、抗生剤の内服、鎮痛剤を使用します。
外耳道真菌症
概要・原因
- 外耳道のジクジクや耳漏があり湿っていると、真菌(かび)が生えやすくなります。
- 耳掃除や外耳道湿疹の繰り返しで、真菌・細菌から皮膚を守る皮膚のバリア機能が弱くなり、常在菌としての真菌の感染が起こりやすくなります。
- 顕微鏡下に耳鏡で観察すると黒や茶色白などのカビの塊が観察でき診断できます。
- かびを視診上確認できないときは、培養検査をすることあります。
症状
- 強いかゆみ、痛み、耳だれ、耳閉感、難聴を起こします。
- 鼓膜・外耳道皮膚のびらんが見られ、黒色や茶色の耳だれ、外耳の腫れ、出血することもあります。
治療
- 真菌のかたまりを除去し外耳道の清掃・洗浄・抗真菌剤の塗布を行います。
- 通院での局所治療が必要となります。
耳管開放症
概要・症状
- 耳管が開いた状態で、音声と空気が交通するようになり、自分の声がひびく、呼吸音が聞こえる、耳がつまる、こもる、低い音が聞き取りにくいなどの症状を起こします。
- 頭を下げたり、横になっていると、一時的に症状が和らぎます。
原因・診断
- きっかけ、原因として、ダイエット、体重が減ったとき、運動、脱水気味、ホルモンバランスの変化、経口避妊薬、妊娠等々があります。
- 若年の女性に多く、男女とも高齢になると開放症になりやすい傾向があります。
- 診察時、顕微鏡下で呼吸と共に鼓膜が動くと診断は確定です。頭を下げて症状が軽快する場合は、開放症が疑われます。多くの場合、診察時には、聴力検査、鼓膜所見など正常です。
治療
- 体重減少の場合は、増加を図る、妊娠の場合は様子を見る、脱水の場合は、暑い日の運動を避ける、水分補給を心がける。
- 漢方薬が有効の場合があります(加味帰脾湯)。生理食塩液を点鼻すると一時的に効果があります。
耳管狭窄症
概要
- 耳管が開きにくくなり中耳の換気が出来にくい状態です。嚥下で耳管が拡がって中耳の圧を外気圧と同じ圧に出来ない状態です。急性鼻炎、上咽頭炎、などの感冒の症状、副鼻腔炎の後鼻漏、アレルギー性鼻炎、アデノイド、上咽頭の腫瘤などが原因となります。上咽頭の耳管の開口部や耳管の炎症が起こり耳管狭窄症になります。胃酸逆流が原因になることもあります。
症状
- 耳閉感、つまり、ふさがり、自分の声が響く、聞こえにくいなどの症状があります。耳管の閉塞状態が続くと鼓膜の陥凹を来し、陰圧状態が続くと滲出液が貯留して伝音難聴になります。
- この状態で飛行機にのると耳抜きをしっかりしないと航空性中耳炎になることがあります。
検査
- チンパノグラム、聴力検査を行います。鼻腔と上咽頭を内視鏡で観察することもあります。
- 顕微鏡下で鼓膜の陥凹や滲出液があるか確認します。
治療
- 原因疾患に対応する治療を行います。例)「アレルギー性鼻炎なら抗ヒスタミン剤、炎症なら抗炎症剤など慢性副鼻腔にはマクロライド投与など」。それでも改善せず、上咽頭、耳管咽頭口に炎症が無ければ耳管通気を行います。
滲出性中耳炎 子供
概要
- 中耳腔に滲出液という液体がたまる病気です。耳痛、発熱はありません。3~5歳で頻度が高く、7~8歳で治癒の傾向を示し、10歳までに多くがよくなります。子どもの難聴の原因では一番多いものです。滲出性中耳炎になりやすい時期は、急性中耳炎になる時期と重なっています。
経過
- 急性中耳炎がきっかけで起こることが多いとされています。中耳の粘膜の炎症と耳管の働きの低下があると、粘膜からしみ出た液がたまりやすくなります。
- カゼの繰り返しなど鼻(副鼻腔炎)や、のど(上咽頭)に炎症があったり、アデノイドが大きい場合などでは、耳管の働きが悪くなり、中耳の粘膜が障害されて、溜まった中耳腔の液を、排出できにくくなります。
- カゼをひかなくても、鼻をすする癖が日常的にあると、なりやすくなります。むやみに鼻をすすらないことが、中耳炎の再発と悪化の予防になります。
治療
- 軽症から、中等症、難治性まであります。年齢によっても、治り方が違います。難治性の場合は、年単位の治療を要する事もあります。中耳にたまっている滲出液をなくして聞こえをよくするための治療と、耳に悪い影響を与えている鼻やのどの病気に対する治療とを並行して行います。
- 上気道炎症状などが目立たない場合は3ヶ月以内に良くなることも多いので、特に処置を行わずに鼓膜の状態を観察することもあります。
- 難治性の場合、鼓膜切開をしても、再度液が溜まり、たびたび滲出性中耳炎をくり返す場合、数ヶ月以上中耳腔の液が溜まり聞こえが悪い場合、鼓膜の変化がある場合等、鼓膜にチューブを入れる手術がよく行われます。同時に、アデノイドの手術をする事もあります。
急性中耳炎 子供
概要・症状
- 急性中耳炎はこどもに多い病気です。特に3歳以下の乳幼児に多い傾向があります。多くは‘カゼ‘の経過中、中耳に、咽頭(のど)の細菌やウイルスが入り、急性の炎症を起こします。鼓膜が赤くなったり、膿がたまり、腫れたりします。カゼと前後して起こることが多い疾患です。
- 耳が痛い、発熱、耳の違和感、耳閉感、耳漏(みみだれ)、難聴などの症状が出ます。乳幼児は、機嫌が悪くなる、ぐずる、耳をさわるなどの行動や態度を示すことがあります。
経過・治癒しにくい環境
- カゼにかかりやすい環境(集団保育)で、カゼを繰り返すと、中耳炎になりやすく、また中耳炎が反復して、難治化するきっかけになることがあります。一般に、中耳炎は低年齢ほど(0歳~2歳児)、かかりやすく、再発して治りにくい傾向があります。
- 中耳炎を繰り返しておこすかどうかは、主に子供さんの体質(抵抗力)や生活環境、薬の効きにくい耐性菌などに影響されます。
- 3歳を過ぎる頃から、免疫力が強くなってくると同時に、耳管の機能も発達してくると、急性中耳炎にかかりにくくなってきます。
治療
- 軽症の場合は抗生物質や消炎剤等で治療します。抗生物質は使用せず、様子をみることもあります。中等症以上で、膿がたまって鼓膜の腫れがひどく、痛みが強いときや、熱が高いときは鼓膜を少しだけ切る事があります。家庭でも鼻汁を吸引するなど鼻の処置も大切です。急性中耳炎を、くり返す場合(反復性中耳炎、難治性中耳炎といいます)には、何回も鼓膜切開が行われることもあります。
- 反復性・難治性の中耳炎には、鼓膜のチューブ留置という手術が選択枝となることもあります。
外傷性鼓膜穿孔
概要
- 耳かきや綿棒などで直接に鼓膜を破る直達性の穿孔と、手の平で外耳部を叩いたり、ボールが外耳部に当たったり、海で水面にたたきつけられたりして、鼓膜に気圧が加わり圧外傷で鼓膜が破れる介達性とがあります。
- 大穿孔の場合、花火や溶接の火花が原因の場合、経過中に中耳や外耳の炎症や感染がある場合は、穿孔の治癒は遅れるか閉鎖しないことがあります。
耳小骨連鎖離断・外リンパ瘻
- 耳かきなどによる直達性の鼓膜穿孔では、合併症として耳小骨離断や外リンパ瘻をおこしていることがあリ注意が必要です。耳鏡検査による視診では鼓膜穿孔の診断は容易ですが、耳小骨の離断や外リンパ瘻の診断は初診日には難しいことも多くあります。(特に乳幼児)
検査
- 顕微鏡下耳鏡検査で鼓膜の穿孔の部位や大きさ、感染の有無を観察します。聴力検査で気導と骨導を検査します。50dB前後の気・骨導差があれば耳小骨連鎖離断を疑います。耳小骨の連鎖の異常があると鼓膜の穿孔が閉じても難聴が持続する事があります。めまいがあれば眼振を観察します。
症状・気をつけること
- 耳閉感、難聴、耳鳴、耳痛、耳漏、出血など。
- 内耳への外傷があれば、めまいや、希に顔面神経麻痺がおこります。
- お風呂などで、直接耳の中に水を入れないように注意します。プールはしない方が良いでしょう。
治療
- 予防的な抗菌剤の内服はせず、耳漏があれば抗生剤の内服をします。聴力検査で骨導での難聴や眼振がある場合は入院加療が必要なことがあります。
- 穿孔は、1~3ヶ月以内に8割が自然に閉鎖することが多いので、3ヶ月程度経過をみます。
- 3ヶ月~6ヶ月以上経過しても穿孔が閉じない場合は手術を考慮することになります。
- 耳小骨連鎖の離断や外リンパ瘻などの合併症の疑いがあれば詳しい検査や手術の必要性が出てきます。
真珠腫性中耳炎
概要・症状
- 先天性真珠腫と後天性真珠腫に分類されます。
- 鼓膜の一部が奥へ入り込み、周囲の骨を吸収して真珠腫が少しずつ大きくなります。
- 徐々に進展して、耳小骨を破壊すると難聴が進みます。半規管まで進展するとめまいが起こります。顔面神経麻痺、希に髄膜炎を起こすことがあります。
- 鼻をすする習慣や、耳管機能の不良で発症することが知られています。
- 真珠腫に感染を起こすと耳漏、耳閉感、難聴、耳痛がおこります。
検査
- 顕微鏡下で鼓膜を観察します。特有な鼓膜所見から真珠腫を疑い診断します。聴力検査で伝音性難聴か、混合性難聴かを検査します。
- 真珠腫の範囲や進展度合いを知るにはCT検査が必要になります。
治療
- 周囲に進展した場合は薬物での治療では治癒しません。真珠腫の根治治療は手術です。真珠腫の進展の程度により手術方法が選ばれます。
先天性真珠腫
- 生まれつき中耳腔に真珠腫が存在していることがあります。
- 乳幼児の時期に耳鼻科の診察で、鼓膜の裏側に白く丸い病変の存在が確認出来、(たまたま)真珠腫が見つかることがあります。
慢性(穿孔性)中耳炎
概要・症状
- 急性中耳炎を繰り返したり、長期に炎症が治まらず続くことなどが原因となります。鼓膜の穿孔を来したり、耳管機能が不良の場合は、鼓膜が中耳の粘膜と癒着した状態になります(癒着性中耳炎)。
- 耳かきなどの外傷で鼓膜の穿孔を来し、鼓膜の穴が開いたままになることも原因となります。
- 上気道炎での耳管経由の感染や直接鼓膜の穴を通じて細菌感染を来し耳だれを反復します。
- 耳小骨が硬くなると伝音性の難聴が進行したり、内耳へ炎症が波及するとめまいを来したり、感音難聴が進行する事があります。
検査
- 顕微鏡下で鼓膜を観察します。鼓膜の穿孔があるか、癒着してるかなどがわかります。
聴力検査で難聴が伝音性か、混合性の難聴かを検査します。
治療
- 耳漏があるときは、耳処置、抗生剤の点耳をします。抗生剤の内服を行うこともあります。
- 根本的には、鼓膜穿孔閉鎖術、鼓膜形成術、鼓室形成術などの手術治療が必要になります。必要な時は紹介させていただきます。
イヤホン難聴(音響性聴器障害 騒音性難聴)
概要・症状
- イヤホンやヘッドフォンで長時間、大音量で音楽を聞くなど間違った使い方をすると難聴を誘発します。
- 大きな音の振動により、内耳の有毛細胞が壊れる事が原因です。聴力はゆっくり悪化して、高音域から低下します。
- 85db以上の音を聞き続けると難聴のリスクが高まります。(地下鉄の車内が80dB前後、犬の吠える声が90dbと言われています。)
経過
- ヘッドホン、イヤホン難聴では、高音域から少しずつ低下するので難聴を自覚したときには回復は難しくなります。予防が大事です。
予防が大事です
- 周囲が騒がしい環境では、イヤホンとヘッドフォン使用時は音量に気をつけるか避ける。
- 常に大音量は避ける、ノイズキャンセリング機能があるイヤホンを使う。
- 1日あたり5時間半以内(少ないほど良い)、また連続して聞かずに、間に休憩を取る。
急性音響外傷
- 130dB以上の強大音(機械の爆発や破裂音、銃火器の発射音、エアバッグ音など)に瞬間的に暴露されることで難聴を発症することがあります。
突発性難聴に準じて治療します。高度の難聴の場合もあり、早期の治療でも聴力の回復は難しいことがあります。
急性音響性難聴
- ライブやコンサートで大音量(100~120dB)を数分から数時間、聞いた直後から難聴になることがあります。難聴、耳閉感、耳鳴を自覚します。突発性難聴に準じてステロイドで治療します。早期治療で改善が期待できます。
急性低音障害型感音難聴
症状
- ある日、ある時間帯に急に、耳のつまり感、音が響く感じ、耳がぼーとするなどの症状がおこります。軽いめまいがおこることもあります。(片方の耳のことが多いです)
原因
- 女性に多く見られます。病因は不明ですが、内リンパ水腫が想定されています。精神的、肉体的ストレスや睡眠不足、感冒、過労などが誘因になると考えられています。
検査
- 聴力検査では、低音域3周波数(125.250.500)の難聴を認めます。中音、高音域は聞こえているので、難聴ではなく、多くの方は「つまり感、ひびく感」などを自覚します。
治療
- 比較的聴力が改善に向かいやすい病気です。利尿剤(リンパ水腫を改善するため)やビタミン剤、血液循環改善剤、漢方薬など副作用の少ない薬を処方をします。難治例や難聴の程度が高度の場合は、ステロイド剤を使用する事もあります。
- 日常では、規則正しい生活、十分な睡眠、適度な運動(ウオーキングなど)精神的ストレスの回避が大切です。
注意事項
- 発症してしばらく、日により低音域の聴力が変動する事があります。
- そのため受診した日に聴力検査で低音域が正常で左右差がなければ確定できず、数度の聴力検査で診断できることもあります。
- 症状の変動のある方は、症状がある日の受診をおすすめします。
- 良くなっても、再発することがあります。 メニエール病へ移行する場合もあります。
突発性難聴との違い
- 突発性難聴もある日急に発症する感音難聴です。最初から難聴を自覚することが多く、治療はステロイドの投与が標準となっています。難聴が治癒する割合は低くなります。難聴の改善、悪化の繰り返しはありません。
- 軽度な突発性難聴と急性低音障害型感音難聴は診断基準が重なる場合があります。
突発性難聴
症状
- ある日突然、片方の耳が聞こえにくくなる病気です。耳鳴やめまい、吐き気などを伴うことがあります。両耳同時に起こることは、まずありません。難聴の改善・悪化を繰り返すことはなく、通常は再発はありません。
原因
循環障害説、ウイルス説などがありますが、原因は不明または不確実なことと定義されています。
検査
聴力検査で難聴が認められます。
治療
- 早期の治療が望ましく(2週間以内)それ以上だと治療効果が少なくなります。当院では内服のステロイド、血流改善剤、ビタミン剤等で治療を行います。
- 高度の場合は入院治療が出来る施設に紹介いたします。標準的は治療を施行しても効果がなく難聴が治癒しない方が一定の割合おられます。
- 治療を行っても、約3割が治癒、3割が一部の回復、3割の方は不変(回復無し)と言われています。治癒率が下がるのは、めまいを伴う、高齢発症、難聴が高度、両側性、等です。
注意事項
- ステロイド使用に当たっては、糖尿病の有無やHBs抗原の検査をして、糖尿病や抗原陽性の方は、専門医いる病院へ紹介いたします。
聞き取り困難症・ 聴覚情報処理障害
LiD/APD
概要
聞き取り困難を自覚し、純音聴力検査が正常、語音明瞭度が正常範囲のもの。
- 音・声は聞こえて、聴力検査でも正常範囲ですが、騒音環境や複数人の会話では、言葉を聞き取りづらく、聞き間違いがある状態です。
- まだ世間の認知度も低く、検査法や診断基準はまだ確立されていません。
ー引用ここからー
治療・対処法・ガイドライン
2023年現在において、LiD/APDは治療で治るものではありません。メカニズムをみると、脳の特性が背景要因になっていると考えられ、中には発達障害の傾向がある人もいます。しかし、聞き取りにくさの程度や環境など症状は人それぞれ異なるもの。環境調整・補聴手段の利用・心理的な支援などを組み合わせ、何が最も有効であるかを知ることが改善のための第一歩になるでしょう。
ー引用終了ー
症状
- 聞き返しが多い、聞き誤りが多い
- 騒音下、雑音下での聞き取りが苦手、難しい
- 電話対応が難しい
- 言葉で言われたことは忘れたり、理解しにくい
- 早口や小さな声が聞き取りにくい
- 長い話が苦手で、聞き続けるのが難しい。
検査
当院で出来る検査
- 純音聴力検査、語音明瞭度検査(当院で検査可能)、(小渕らの)聞こえにくさに対する質問(WEBで当院可能)
当院では出来ない検査
- 両耳分離聴検査、早口音声聴取検査、雑音下の語音聴取検査、ギャップ検出閾値検査、両耳交互聴検査、聴覚的注意検査、複数音声下聴取検査、ABR、ASSR 画像検査 等
- その他発達障害検査(ASD、ADHD)など
診断・対応
- 必要最小限の【純音聴力検査、語音明瞭度検査、聞こえにくさに対する質問】の検査までは当院対応可能です。
- 診断にさらなる検査が必要な場合は対応が出来る施設に紹介させていただきます。
聞こえにくさに対する質問票です。受診希望の方は事前に回答をお願いします。
めまいについて
良性発作性頭位めまい症
概要・原因
- 内耳にある耳石が三半規管に入ることが原因です。
- ”回るめまい”では最も頻度が多いとされています。
症状
- 寝返りや、寝たり起きたり、上を向いたり、振り向いたり、急に頭の位置を変えると、めまいが起こり、数十秒程度でおさまります。
- 同じような頭の動きかたをすると、めまいが繰り返しおこります。
- 難聴、耳鳴、耳閉感などを認めることはありません(少ないです)。
検査・診断
- CCDカメラで目の動きを観察して診断します。難聴の有無を知るために聴力検査をします。この時特徴的な眼振が観察できれば診断が確定できます。(受診時にはないこともあります)
治療
- 運動療法が有効なことがあります。対症療法として内服薬(抗めまい薬、循環改善薬、吐き気止めなど)を処方します。
- 症状は、数日から1ヶ月程度で減弱してなくなる事が多いです。
メニエール病
概要・原因
- 不明ですが内リンパ水腫の存在があります。
- 女性に多いとされています。
- 疲労、睡眠不足、心身のストレスなどが発症の背景として考えられています。
症状
- 急に10分から数時間程度のめまいがおこります。めまいは不定期に繰り返します。同時期に難聴、耳鳴、耳閉感がおこります。めまいが治まると、耳の症状も治まりますが、繰り返すと難聴が進行することもあります。
検査・診断
- 聴力検査、めまいの検査(CCDカメラで眼振をみる検査など)、平衡機能検査などをします。
- 受診時には落ち着いており、難聴もなく、眼振も確認できないこともあります。
治療
- 抗めまい薬、利尿剤、ビタミン剤、血行改善剤、漢方薬などの薬物療法を行います。
- 水分を多めに摂取する。ストレス改善、過労を避ける、適度に体を動かす、睡眠不足の改善なども大事なことです。
前庭神経炎
概要・原因
- ある日突発的に、激しい、めまいがおこり数日以上続きます。吐き気嘔吐もおこります。
- ウイルス感染が考えられています。
症状
- 回転性のめまいが、1日から数日間持続します。
- 激しいめまいは数日間で治まってきますが、ふらつき感などは数週間持続する事があります。
- 激しいめまいは最初の1回だけです。難聴は伴いません。
検査・診断
- 聴力検査、めまいの検査(CCDカメラで眼振をみる検査など)、平衡機能検査などをします。
- 受診時に、強いめまいがあるときは、眼振が観察されます。
治療
- 強いめまいがあるときは安静にします。抗めまい薬、ビタミン剤、血行改善剤などの薬物療法を行います。めまいが激しく飲食できないときは入院を要することもあります。ふらつきが長く続く場合は平衡訓練が有効です。
PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)
3ヶ月以上続く慢性めまい
概要
- PPPDと言う疾患名は以前は存在しませんでした。2017年に診断基準が発表されました。診断基準が出来る以前は、原因不明の「めまい症」と診断されていた慢性めまいの約70%はPPPDだったと報告されています。慢性めまいの原因として最多で、全めまいの約10%を占めます。
- 女性(男性の倍)に多く平均年齢は49歳と報告されています。
めまいの症状・特徴
- 浮遊感、不安定感、揺れる、揺れ動くなどの非回転性のめまいが、3ヶ月以上、ほぼ毎日ある。
- 立ったり、歩いたりしたら悪化する。
- 朝よりも夕方の方が悪化する。
- 急にたちあがったり、振り向いたり、エスカレータに乗ると悪化する。
- スーパーで陳列棚をみたり、パソコンのスクロール画面を見ると悪化する。
- 過去にメニエール病や良性発作性頭位めまい症などのめまい疾患が回復した後にPPPDと診断される例が多かった。
検査
- 聴力検査や平衡機能検査をします。PPPD特有の異常所見はありません。
- 過去に経験しためまい疾患の検査異常は存在します。(メニエール病の難聴など)
- めまいの原因が他の疾患の可能性はないかを確認するため(前庭機能障害や中枢性疾患など)精密な平衡機能検査(温度刺激検査 重心動揺検査 視覚刺激検査 耳石器機能検査ー当院では全て出来ません)や頭部の画像検査も必要となることもあります。
診断
- PPPDに特徴的な検査項目はありません。症状と経過のみで診断基準に照らして診断します。症状以外明らかな異常はないので問診が大切になります。
- 新潟 PPPD 問診 票(NPQ)が使用されます。総得点72点中27点以上だと可能性が高いと言えます。
PPPD問診票
- 点数を合計して下さい。72点満点で27点以上でPPPDの可能性があります。
WEB問診票です。回答して下さい。
治療
以下の治療法が有効性が報告されています。治療法は確定されていません。
- セロトニン系の抗うつ剤
- 前庭リハビリテーション
- 認知行動療法
参考文献
当院の対応
- 認知行動療法に通じたスタッフ、リハビリを指導するスタッフ・言語聴覚士や抗うつ剤に慣れた医師など検査機器が充実してマンパワーがある医療機関でないと、一般診療所では、検査・診断から治療までの流れは難しそうです。
- 当院では問診(新潟 PPPD 問診 票(NPQ)と一般的な聴力と平衡機能検査は可能です。
- 特殊な検査・投薬・リハビリなどの専門的な対応は当院では対応出来ません。
乗り物酔い(動揺病)
自律神経症状が発生する状態
概要
- 車や船などの乗り物やブランコやジェットコースターなどに乗ると、悪心、嘔吐、生唾、生あくび、冷や汗、顔面蒼白、頭重感、胃部不快感などの自律神経の刺激状態引き起こします。ゲームでも起こります。
発現の流れ
- 内耳(耳石器、半規管)に、乗り物のスピードの変化、前後の発進や停止や回転などの刺激が加わると、目から入る視覚情報と、体の知覚情報との間に混乱が生じて大脳が不快と感じて自律神経を刺激して起こります。
おこりやすい年齢
- 小学校から中学校の年齢に多く、女児の方が男児より多いと言われています。
- 年齢とともに起こりにくくなります。
- 幼児や高齢者は起こりにくい。
対処方法
- 乗り物に乗る前日はよく眠る。
- 揺れが少ない場所を選ぶ。(船は中央、バスは進行方向が見える前方の席)、窓を開けて換気をよくする。車内でスマホは見ない。遠くの景色を見る。
- 車の助手席では前を見て動きを予測して体を対応させる。自分で運転する。
- 当日乗車前に薬局の市販薬のトラベルミンなどの抗ヒスタミン剤の乗り物酔いを飲んでおく。
乗り物酔いしにくくする
- 年齢とともに起こりにくくなります。
- 小さいときから、遊園地の遊具(ブランコ、シーソー、鉄棒など)、自転車、運動などで、前後・左右・回転などの動きに慣れて平衡感覚を鍛えて乗り物酔いになりにくい体にします。
鼻の病気について
はながつまる(鼻閉)
概要
- 鼻がつまる原因として、鼻腔内の原因、鼻腔の周囲の原因があります。
- 左右の鼻腔は交互に定期的に、粘膜の腫脹と収縮を繰り返していますので左右の鼻の通りやすさが変化します。
- 夜間睡眠時に自律神経の影響で副交感神経優位になり粘膜が腫脹して鼻閉になりやすいことがあります。。
原因
- 鼻腔内の原因
アレルギー性鼻炎
鼻炎
薬剤性鼻炎
慢性鼻炎
急性鼻副鼻腔炎
慢性鼻副鼻腔炎
異物
鼻腔腫瘍
鼻弁の狭窄
鼻中隔彎曲症
鼻甲介肥大
- 鼻腔外の原因
アデノイド肥大
腫瘍
外傷性
上咽頭腫瘍
リンパ腫
- その他
特殊病変
特殊炎症
年齢要因
妊娠時
心因性
検査
- 鼻鏡、鼻咽喉内視鏡で鼻腔、上咽頭を観察します。
治療
- 原因疾患に対応する治療を行います。
高齢者に多い水様性鼻汁(急に透明な鼻水が垂れてくる)
非アレルギー性の鼻炎
- 水のような透明なサラサラした鼻水が鼻の穴から流れ出る状態です。
水性の鼻汁過多(老人性鼻漏)
- 高齢の方で、水様性の鼻汁が持続する。鼻のつまり、くしゃみはありません。
- 加齢により鼻粘膜の萎縮・血流減少で鼻腔内粘膜温度の低下が起こります。鼻汁の輸送力も落ちます。
- 呼気の水蒸気が鼻粘膜で冷やされて鼻漏となります。このため寒冷期には水のような鼻水が続きます。
- 体内からの鼻汁ではないのでアレルギーの薬は効果がありません。
- 下趾を(足湯)を暖めると鼻の粘膜の温度が上昇することにより症状の軽減につながると考えられています。鼻粘膜の温度を上げるスチームによる温熱療法も効果が期待できます。八味地黄丸、当帰芍薬散、麻黄附子細辛等の有効性も報告されています。
血管運動性鼻炎
- アレルギー性鼻炎のように、水様性の鼻水、鼻閉、くしゃみがおこりますが、検査してもアレルゲン(原因)が見つからない鼻炎です。
- 薬物療法は定まっていません。アレルギー性鼻炎の第1世代の抗ヒスタミン薬や鼻噴霧ステロイド薬が使用されますが効果は限定的です。
摂食性の鼻漏
- 熱いものや辛いも(カプサイシンなど)のを食べると水様性の鼻汁が出ることを言います。くしゃみ、鼻閉、かゆみはありません。辛みと熱さがセットで症状が起こりやすいとされています。
- 副交感神経経経由の刺激で鼻腺から鼻汁の分泌がおこります。
- 以前は抗コリン作用のある薬剤が有効でしたが現在は発売されていません。
温度刺激による鼻漏
- 冷気を吸い込むことで鼻粘膜が刺激を受けて神経刺激により鼻腺から鼻汁の分泌がおこります。
- 熱い汁物を食べたときは、高温多湿の空気が鼻腔内で冷やされて結露となり鼻漏となります。
後鼻漏・後鼻漏感
後鼻漏の概要
- 鼻汁がのどに降りる状態です。健康な人でも、鼻汁は1日1~2リットルの量が分泌されています。
- 鼻汁の量が増加したり、粘性が増したり、粘膜の輸送機能が低下したりすると後鼻漏と自覚します。
- 鼻汁の色は好中球の増加とともに透明から黄色へ、緑色へ、と変化します。色はウイルス性と細菌性との相違よりも炎症の程度の違いになります。色の付いた膿性鼻汁がすぐに、抗生剤投与の指標というわけではありません。
後鼻漏感
- 内視鏡で観察しても後鼻漏が見えなくても(目立たなくても)後鼻漏が気になる状態を言います。
- 鼻粘膜の加齢性変化があり粘膜の輸送力も低下して、自覚症状として後鼻漏感を起こすことがあります。
- 胃食道逆流症も後鼻漏感を起こすことがあります。
原因
原因としては、鼻・副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎が多くを占めます。
- 鼻腔内の原因
慢性鼻副鼻腔炎
アレルギー性鼻炎
急性鼻炎
急性鼻副鼻腔炎
血管運動性鼻炎
慢
異
鼻
鼻弁の狭窄
鼻中隔彎曲症
鼻甲介肥大
- 鼻腔外の原因
上咽頭炎
上咽頭腫瘍
アデノイド肥大
- その他
心因性
特
年
検査
- 鼻鏡、後鼻鏡、喉頭鏡、鼻咽喉内視鏡で鼻腔、上咽頭、咽喉頭を観察します。
治療
- アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などの原因疾患に対応する治療を行います。
自宅での治療
- 温熱療法:市販のスチーム吸入器を使用して蒸気で鼻腔や咽頭を温めます。
- 市販の鼻洗浄器を利用して(等張からやや高張の)食塩水(体温程度)で粘液やアレルゲンの除去や線毛機能の改善や粘膜保護を期待して洗浄します。
アレルギー性鼻炎・花粉症の内服薬について
自動車の運転への注意について
薬物治療
- アレルギー症状を抑えるための薬物療法として抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬などの内服薬、ステロイド点鼻薬などが使われます。
- 抗ヒスタミン薬の種類によっては医薬品の添付文書に、車の運転について注意事項の記載があるものとないものがあります。
医薬品の添付文書
- 医薬品の添付文書とは、薬機法「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に基づいて作成されている文書です。抗ヒスタミン薬には車の運転や機械の操作についての注意事項があります。
抗ヒスタミン薬の添付文書の記載
眠気を催すことがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう十分注意すること。
急性鼻炎
概要
- 急性鼻炎の大部分は風邪のウイルスによって起こります。小児は特にかかりやすい病気です。
- このウイルス感染に細菌性感染が加わって、鼻水を粘稠にしたり、黄色にしたりします。
症状
- 鼻の乾燥感、鼻汁、くしゃみ、鼻閉などがおこります。鼻汁は水性から膿性へ変わることもあります。
治療
- 対症療法が主となります。(感冒薬など)安静、睡眠を十分に取り、水分をとるなどして自然に良くなる疾患です。
- 上手に鼻をかめない年齢の子どもさんには、保護者の方が鼻汁を吸引してあげるのが大事です。
薬剤性鼻炎
概要
- 血管収縮剤配合の市販の点鼻薬の使い過ぎにより起こります。
- 市販の点鼻薬は、効果はありますが、長期に連用すると、慢性的に粘膜の肥厚がおこり、鼻閉状態が続きます。
症状
- 鼻閉が主症状です。
治療
- 血管収縮剤入りの点鼻薬をなるべく早く中止して離脱することが肝要です。
- 抗アレルギー剤(鼻閉を改善するタイプ)と点鼻薬(ステロイド点鼻薬が主体で連用可能)に切り替えていきます。
鼻ポリープ(鼻茸)
概要・症状
- 鼻ポリープとは、鼻粘膜や副鼻腔粘膜の一部が成長してでき、鼻茸(はなたけ)とも呼ばれます。
- 副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、好酸球性副鼻腔炎に伴い鼻ポリープは多く認められます。
鼻ポリープがあると副鼻腔と鼻腔がつながっている部分の通りが悪くなることによって副鼻腔炎の治癒を妨げることもあります。 - 鼻ポリープができると、鼻づまりや鼻水、嗅覚障害、頭痛などの症状をおこします。
検査
- 鼻鏡や、内視鏡検査、画像検査を行います。
治療
- 鼻茸が小さく、炎症が高度でなければ、薬物療法である程度良くなる可能性もあります。
- 内視鏡手術を行って、炎症を起こしている粘膜とともに鼻ポリープを取り除きます。
急性鼻副鼻腔炎
概要
- 風邪などで、ウイルスや細菌が鼻腔に感染して炎症を起こし、それが副鼻腔にまで及ぶことで起こります。
症状
- 膿性鼻汁や鼻汁が後方に落ちたり、鼻閉、発熱や、頭痛や顔面痛などの症状を伴います。
検査・診断
- 鼻鏡で鼻腔内を観察して、鼻汁の性状、鼻茸の有無、粘膜のチェックをします。また内視鏡では、後鼻漏や副鼻腔からの出口を観察します。
- 症状によっては、画像で(CTなど)副鼻腔をチェックします。
治療
- 抗生剤や気道粘液調整・粘膜正常化剤(カルボシステイン)などを使用します。症状が長引いたり、繰り返したりして2~3ヶ月以上続くものを慢性副鼻腔炎と言います。
歯性上顎洞炎
- 歯根の炎症が原因の上顎洞炎もあります。上顎の臼歯の歯根と上顎洞は近接しています。上顎の臼歯の虫歯を放置したり、上顎の歯根部の治療の後に、治療した側の歯の痛み、頬部の痛み、膿性の鼻汁や、悪臭があれば上顎洞の炎症をおこしている可能性があります。検査はCTが有効です。
- 耳鼻咽喉科での治療とともに、歯科での治療が必要になります。
慢性鼻副鼻腔炎
概要
- 慢性副鼻腔炎は、副鼻腔炎の症状が3ヶ月以上続いた状態を言います。
- 多くは急性副鼻腔炎を繰り返すか、副鼻腔炎が長引いて起こります。多くは細菌感染が原因です。少数ですが、真菌が原因となることもあります。、歯根の炎症が原因の上顎洞炎もあります。上顎の歯根部の治療中又は治療後に、膿性の鼻汁やにおいがあれば疑われます。
症状
- 鼻閉、色のついた粘い鼻汁、頭重感、嗅覚障害、後鼻漏など
- ポリープがあると常時鼻閉がおこります。
- 後鼻漏があると咳と痰が続くことがあります。
検査・診断
- 鼻鏡や内視鏡で、鼻汁の性状、後鼻漏の有無、ポリープの有無を観察します。CT検査では副鼻腔の病変の範囲、骨の変化の有無、また腔内の石灰化の有無(あると真菌の疑い)などがわかります。歯根部の病変の有無も評価できます。(あれば歯が原因の上顎洞炎です)悪性腫瘍も内視鏡、CTで評価が出来ます。
治療
- マクロライド系の抗生剤の少量を3ヶ月程度継続します。漢方薬を併用することもあります。
- アレルギー性鼻炎があれば局所ステロイド点鼻薬、抗アレルギー内服薬を併用します。
- 経過中に顔面痛や頭痛など急性期の症状があれば、急性副鼻腔炎に準じた治療を行います。
- 内服治療が無効の場合は内視鏡下副鼻腔手術を検討する事になります。
好酸球性鼻副鼻腔炎
概要
- 両側の鼻腔にポリープ(鼻茸)が多発する慢性副鼻腔炎です。好酸球が粘膜やポリープに浸潤しています。一般的な副鼻腔炎との違いは、手術後の再発が多く、難治性です。難病に指定されています。
症状
- 鼻がつまり、嗅覚障害がおこります。鼻汁、後鼻漏など一般的な慢性副鼻腔炎と同じですが、鼻汁はニカワ状でかみきれないような粘稠な性状です。喘息の合併も多くみられ、慢性中耳炎(好酸球性中耳炎)を合併することもあります。
検査
- 鼻鏡・内視鏡検査で鼻茸や鼻内の状態を観察します。
- 副鼻腔の画像検査(CT、MRI)で副鼻腔の炎症の状態を評価します。篩骨洞優位の炎症が特徴です。
- 血液検査で好酸球増多が認められます。
治療
- 膿性の鼻汁があれば抗菌剤を内服します。軽症では噴霧ステロイド、抗アレルギー剤の内服を行います。ステロイドの内服が効果が高いのですが、副作用の問題があり、長期間は使用できません。内服や外用での難治例や、重症例では手術療法となります。生物学的製剤が好酸球性副鼻腔炎に適応されるようになりました。
嗅覚障害
概要・原因
- 鼻の天井部分にはにおいを感じるセンサーである嗅上皮があります。
- 原因として、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、鼻茸、急性鼻炎、感冒後(カゼのウイルス、新型コロナウイルス)、頭部打撲後、神経性疾患、薬剤性などで起こります。鼻閉によりニオイの分子が届かなかったり、嗅細胞の障害または粘膜の炎症などで起こります。鼻閉による嗅覚障害は鼻閉が改善されればよくなります。また嗅覚は60歳ころから加齢と共に低下します。
経過
- ウイルスにより嗅神経細胞の障害を起こすと高度の嗅覚障害になることがあります。頭部打撲後の外傷性では嗅神経の障害が起こり多くの場合難治性の経過となります。
検査・診断
- 鼻鏡や内視鏡検査や、症状により画像検査などを行います。
治療
- 原因となる疾患の治療をします。粘膜の炎症や副鼻腔炎による嗅覚障害は、ステロイドの点鼻療法も併用します。
- 鼻内に炎症の無い嗅覚障害にはステロイドの有効性は低いので初期以外はしません。
- かぜによる(コロナを含む)嗅覚障害などで、難治性の場合は漢方薬の当帰芍薬散の内服や、嗅覚刺激療法をおすすめしています。
- 嗅神経性と中枢性の嗅覚障害には嗅覚刺激療法の有効性が報告されています。
においがしない 違うにおいがする
新型コロナウイルスによる嗅覚障害
概要・経過・治療
- コロナウイルスの感染で嗅裂部(鼻腔の天井部)の炎症・粘膜腫脹や嗅神経への障害や嗅覚の中枢への障害がおこり、嗅覚障害がおこると考えられます。
- 感冒後嗅覚障害に準じての治療となり、ステロイドの点鼻(2週間以上経過してから)、嗅覚刺激療法、当帰芍薬散、血液の亜鉛値が低ければZnの投与などが行われています。
- 感染後2 週間以内の嗅覚の自然回復率は約 60~80%と報告されています。2週間様子を見て、嗅覚が改善しなければ、受診をお願いしています。オミクロン株による嗅覚味覚障害は減少傾向にあります。(2024年)
- 嗅覚障害と同時に起こる味覚障害は1ヶ月で約80%が改善すると報告されています。コロナの味覚障害は嗅覚障害を原因とした風味障害のことが多く嗅覚の改善とともに味覚も改善するとされています。